秋だから『ニシノユキヒコの恋と冒険』を見て(読んで)孤独と人を愛することについて考えてみてほしい。

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 東京では、段々と肌寒くなり、秋の到来を感じられる今日このごろ。外に出ると、コートやジャケットを取り出して着てる人がたくさん。一部では紅葉も始まっているとのこと。

 

 何かと1年を振り返ることが多いこの時期に、掲題の作品『ニシノユキヒコの恋と冒険』を読み返していると、以前読んだ時には感じなかったことをたくさんみつけることができたので、ブログに書き留めようと思います。

 

 映画版だと、竹野内豊、麻生久美子、本田翼、木村文乃たるたる豪華キャストで実写化されたことがしばし話題に上がっていましたよね。僕は先に小説を読んでいたタイプなのですが、主人公のニシノユキヒコにぴったりハマる竹野内豊の演技は流石でした。映画のいたるところで、イケメンでモテる男のフワフワ感(どこか自分の知らない世界を見せてくれたり、連れて行ってくれたりしそうな感)を感じることができる映画です。

 

 

真実の愛を求め恋愛遍歴を重ねる男ニシノユキヒコの生きざまを描く、芥川賞作家・川上弘美の連作短編集を映画化したラブストーリー。美男で仕事も順調、女性の扱いもうまい究極のモテ男だが、必ず相手から別れを告げられる主人公を竹野内豊が切なく演じる。メガホンを取るのは、『人のセックスを笑うな』が好評だった井口奈己。ニシノを取り巻く女性たちには尾野真千子、成海璃子、木村文乃、麻生久美子、阿川佐和子ほか豪華女優陣が出演している。 

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ニシノユキヒコの恋と冒険 DVD(特典DVD付2枚組)

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ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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 イケメンで仕事もしっかりこなし、とにかく女に優しいモテ男であるニシノユキヒコ(竹野内豊)は、ひたむきに本当の愛を欲して、さまよっています。人妻(麻生久美子)と関係を持ち、元恋人(本田翼)と二股で会社の上司(尾野真千子)と職場恋愛をしたり、料理教室で出会った主婦(阿川佐和子)もとりこにしてしまうなど。

 

 もともとは、それぞれ独立した短編でしたので、それが集まって本作品になっています。それぞれの短編に女性が登場し、ニシノに恋していくき、そして恋が終わる。しかも、終わり方は切り口が違っていたとしても相手から離れていくというお決まり。彼の周囲には常に女性たちがいて、その彼女たちの欲望を満たすべくひたすら尽くすニシノなのですが、最後は相手が離れて行っちゃう。そういう物語です。切ない短編集。

 

 10人の女性のそれぞれの視点から描かれる「ニシノユキヒコ」という男が、こりゃまたかっこ良いんですな。そして優しい。でもその影にちらっと孤独感がにじみ出る。人を真剣に愛することができず、ハタからみればだらしない男と呼ばれてしまうような彼との思い出。ニシノユキヒコを意識し、好きになり、そして別れるというお決まりのパターンの中にどこか切なさが隠れるんです。

 

 

 ニシノユキヒコはとても女の人にもてるし、他人の気持ちに敏感で、女性が望むことを察知できるので、女性と簡単に関係を結ぶことが出来てしまいます しかし、どうしても心が満たされない。他人を愛するという次元に持っていくことができず、それが自覚的であるようでなく、ひどく彼女を傷つけ、去っていかれてしまう。

 

 そういった空虚、ある種の寂しさ・虚しさの中で、何か充たしてくれるものを生涯ずっと追い求め、いよいよ叶わず、そして亡くなってしまう。胸がきゅっと苦しくなるような読後感があります。原作の小説も、映画も、その死んだ西野が幽霊になって、過去を回想するところから始まるので不意打ちを喰らいますが、面白い演出だと思いました。

 

 文学好きだったり歴史好きの方はお気づきになられたかもしれません。「平安朝やんそれ!」といった趣向!今日を生きる光源氏じゃないかと。しかし、源氏物語と共通するのは光君と同様に内面の人間性の多大なる欠落がある主人公という設定くらいで、西野幸彦には、女に対する欲望はそれほどなく、あくまで女が持つ「彼に対する欲望」と「女特有の寂しさ」を嗅ぎ分けて応答するだけ。その意味では、実際には西野はひたすら女の欲望に対して受け身なんです。

 

 映画版で言うと、職場の上司役は尾野真智子さんが演じられるのですが、竹野内豊と尾野真千子のキスシーンはヤバい。物凄く魅力的です。元彼女役の本田翼さんとの恋愛シーンも若さと可愛さと、竹野内豊のイケメン感が良い感じにMixされキュンキュンしてしまいます(この映画で僕は本田翼が好きになりました)。一方、同じような恋愛シーンでも、木村文乃さんはウエット感が半端ない。それぞれ別々の魅力が引き立てられていて、見る側・読む側を飽きさせません。終始映画を見ている間、ふわふわな気持ちになります。原作は少し読み終わった後に苦しい気持ちが残ります。

 

 そんな女性視点でこの小説、映画を鑑賞することも、もちろんとてもおすすめなのですが、一方で西野自身にフォーカスすると、内容が一変してたように感じられることに気が付きました。過去の辛い経験から、心の隙間をずっと埋めることができない西野。何か充たしてくれるものを生涯ずっと追い求め続けてしまう彼。映画でも小説でも、端々に彼の孤独を感じさせる演出や表現があります。それらを追っていくと、また一歩西野の心情に迫れる気がして。そして最後には叶わず亡くなってしまう。

 

 色々な見方ができる映画となっています。外は涼しい、気分もウキウキしはじめます。温かい陽気は人の心を晴れにする気がします、涼しさはフットワークを軽くします。冬にこの作品を閲覧・鑑賞するとどうしても閉塞感に包まれて鬱々とした気分になってしまう僕ですが、秋だと、また違って作品を感じることができます。ぜひ、読んで(見て)みてください。

 

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

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*1:シネマトゥデイ:シネマトゥデイ