風景と人。

 

Akihabaraflic.kr

 

 

街を撮ることが好きだ。

 

平日は出社前、いつもは電車で通勤するのだけれど、最寄りの隣駅が職場なものだから、歩いて通勤してもそこまで時間はかからないし、苦痛でもないから、通勤がてら一眼レフを首から下げて歩きながら街を撮る。

 

休日には、よく、山手線でテキトウな駅で降りて、その街を散歩しながら写真を撮り歩くことをしている。山手線と言っても、降りたことのない駅はたくさんあるから、毎回わくわくする。知らない街は、新鮮だ。

 

とある土曜日、秋葉原で降車して歩き回っていた。PCのパーツを買うために時々訪れることはあるが、写真を撮るために降り立ったのは始めてだ。その日は歩行者天国の日で、オタクの人たちや海外からの観光客で道はごった返していた。道端にあふれるメイドカフェやJKリフレのキャッチをするバイトの女の子に目が行く。数年前に比べると、JKリフレが増えたなという印象が強い。僕はJKリフレに行ったことはない。JKリフレで働いている友達はいるので、内情やその業界のことは少し知っているけれど。

 

そうそう、僕は男性が利用するような、風俗や水商売系のお店のキャッチに、殆ど声をかけられたことがない。思い返す限り、人生で2度しかキャッチに声をかけられたことがないのだ。「近寄るな」というオーラーが出ているのだろうか、「この人は来ないだろうな」というオーラーがでているのだろうか。一方で、ホスト、ゲイバー、「売り」のスカウトには声をかけれる。やはり、そういうオーラーなのだろうか。僕は、そういう気はないのだけれど。

 

そんなことをぼーっと考えながら、その日も秋葉原を歩き回っていたのだが、風景や人混みを撮っていた時、ちょっとした厄介事が起きた。

 

おい、お前、今そこの女性を盗撮しただろう。

そこのお姉さん、今この人盗撮しましたよ!!

 

太めの小柄な30代後半に見える、髪の毛がボサボサのロン毛の、ソフマップの手提げを持っている男が、急に僕を掴んで、ちょうど撮影した風景に写り込んだ女性にそう叫んだ。

 

急に叫ばれて掴まれたものだから僕は動揺してしまった。こんな経験は初めてだった。僕は街の風景を撮っていたし、その写真も彼にとっさに見せたが、彼の目には、それは盗撮画像と映るらしい。怖いな。

 

すみません、街の風景を撮影していて、お姉さんが映りこんでしまいました。こちらがその写真です。もし、嫌な思いをされたなら削除します。ご迷惑をお掛けしました。

 

と言って、僕はその女性の後ろ姿が写った写真をとっさに彼女に見せた。盗撮犯にはなりたくないし、盗撮したつもりも全く無い。とっさに答えたものの、落ち着いて説明出来たと思う。

 

風景写真ですし、私も後ろ姿だけですし、こうやって風景を撮っている人多いので、私は全く気にしませんよ。大丈夫です。

 

色白で、小柄で、くしゃっと崩れた笑顔を見せてくれた、綺麗な女性だった。そんな笑顔を見て僕は安心してしまったところ、先ほどの男性が僕を突き飛ばした。突き飛ばされるなんて、想定しているはずもないから、僕はバランスを崩して倒れた。カメラが下敷きになった。その日持ち歩いていた、父から譲ってもらったキヤノンのEOS5D無印が壊れてしまった。もう10年前に発売された機種だから、寿命と言えば寿命なのかもしれなかったのだけれど、こういう形で壊れるとは思いもしなかった。

 

騒ぎ立てたくもないし、その1ヶ月前に僕は別のカメラを購入していたので、穏便に済ませたい気持ちで、その場を収めた。犠牲になったのはカメラと、腕の擦り傷ぐらいだ。今思い返すと、カメラの修理代ぐらいは請求してもよかったのかもしれない。10年前の型で、メーカー自体が有料のサポートも打ち切っているので、修理しようがない。

 

男性はそそくさと立ち去っていった後、女性と僕はその場に残された。女性の方が、僕を心配して気を使ってくれた。

 

怪我大丈夫ですか、、カメラも、、、私のせいで、すみません。実は、私弁護士で、、、法律的な観点で言うと、今回のケースって、「撮られない」権利より「表現としての撮影」の方が強く保証されていますんです、判例で。国内だと。よく引き合いに出される「肖像権」の問題って、明確に規定された法律がないので、実は殆ど認められてないんですよ。

引っ掛けるとしたら、「迷惑防止条例」ぐらいなのですが、それにすら今回は該当しないと思います。。

 

「今日は色々と驚きの連続だ。」と思わず口にしてしまわずにはいられない日だった。まさか弁護士だなんて、これこそ”想定外”だ。

 

法律の説明まで、わざわざありがとうございます。擦り傷も、かすり傷程度なので大丈夫です。僕〜と言います。あらためて、自己紹介なんてアレですが。笑 カメラが趣味なのでこうやって撮り歩くことは多いのですが、今日みたいな出来事は初めてです。

 

と世間話をした。彼女も実はカメラが趣味だったらしく、カバンの中からLeicaを取り出した。流石弁護士。

 

時間あったら、お茶しませんか。カメラが趣味な友人はいなくて。よかったら、今日撮った写真見せてくださいよ。 SD入るラップトップ持ち歩いてるので。

 

気を使ってくれたのか、その心理はわからなかったけれど、お茶に誘われた。「予定もないので(と言うか、カメラを持ってフラフラ歩き回っている時点で、そんなことは予想できたのかもしれない)ぜひ。」と答えた。

その日会ったばかりの人とお茶をするなんて、と思う人も多いかもしれない。確かに、例えばこれが男女が逆の話だったら、それこそ、迷惑防止条例等に引っかかってしまうかもしれない。上記のような話の流れもあって、僕は彼女を警戒していなかったので、すいすいと、近くのCafe MOCOに入っていった。写真の話に華が咲いたことは言うまでもない。

 

Looks Good To Me!flic.kr

 

小説の1シーンみたいな1日だったけれど、ちょうど1ヶ月ほど前に起きた、なかなかおもしろい1日。たまには、こういうのも、悪くはないなと思う。

 彼女とは時々写真を撮りに行く仲になった、よくよく話を聞くと僕の3つ上の歳。今は、仕事が忙しいらしい。担当案件が劣勢だそうだ。そんな彼女が

 

写真は唯一自分を現実から解放していくれるもの、撮る時、見る時。

 

とぼそっと言ったのが、ずっと頭の中に残っている。多分、最近なんとなく、現実逃避したい気持ちが高まっているからだ。きっと。全部冬のせいだ。